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2025.5.24

補聴器は片耳だけでも問題ない?片耳が良いケースや片耳・両耳 それぞれのメリットを解説

補聴器は一般的に両耳での装用が推奨されますが、「片耳だけではだめなのか」「片耳だけ聞こえにくい場合はどうすれば良いのか」といった疑問を持つ方もいらっしゃると思います。この記事では、認定補聴器専門店・認定補聴器技能者の立場から、片耳装用と両耳装用それぞれのメリット・デメリットを具体的な状況も踏まえて解説していきます。ご自身の聞こえの状態や生活スタイルに合った補聴器選びの参考として、ぜひ最後までご覧ください。

1章目:補聴器の片耳装用は問題ない

補聴器を選ぶ際、片耳だけにすべきか、それとも両耳に装用すべきか悩む方は少なくありません。どちらの選択がご自身に適しているのか、基本的な考え方と、それぞれのケースについて解説します。

補聴器は両耳装用がおすすめ

人間の聴覚システムは、左右の耳から入ってくることでその能力を最大限に発揮します。音がどの方向から来ているのか、どのくらいの距離にあるのかを正確に把握する能力や、周囲が騒がしい状況でも聞きたい会話や音を選び出して理解する力は、この「両耳聴効果」によって支えられています。

補聴器は片耳装用も可能

一方で、個々の聴力状態によって片耳のみの装用が望まれる場合もあります。その代表例が片耳だけ聞こえにくくなっている「一側性難聴」の場合です。また、左右の聴力レベルに大きな差があり、両耳に装用しても十分な両耳聴効果が得られにくい場合も、片耳装用が選択されることがあります。その他、過去の耳の手術、慢性的な耳の疾患など医学的な理由により片方の耳に補聴器を装用できないといった状況も考えられます。どのような場合でもまずは耳鼻咽喉科や補聴器専門店のスタッフと十分に相談し、決定することが極めて重要です。

2章目:補聴器の片耳装用のケース

 

補聴器は両耳での使用が推奨されることが多いですが、特定の状況や理由から片耳のみの装用が適している、あるいは選択されることがあります。

片耳装用が検討される具体的なケースとしては、主に以下の点が挙げられます。

  • 片方の耳だけが難聴の場合(一側性難聴)
  • 左右の聴力差が非常に大きく、両耳に装用しても効果を十分に得られにくい場合
  • 耳の病気や形状により片耳しか装用できない場合
  • 予算的な制約がある場合

以下で、それぞれのケースについて詳しく説明します。

片方の耳だけが難聴の場合(一側性難聴)

これは、片方の耳の聴力は正常、または正常に近いレベルを保っている一方で、もう片方の耳にのみ明らかな聴力低下が見られる状態を指します。「片側難聴」とも呼ばれます。この場合、聞こえている方の耳に補聴器を装用する必要はありませんので、基本的には難聴がある側の耳にのみ補聴器を使用します。ことばの明瞭度によって効果を得られにくい場合もあります。

左右の聴力差が非常に大きい場合

両耳に難聴と診断された場合でも、左右の耳の聴力レベルに極端に大きな差が存在することがあります。特にことばの明瞭度が片耳だけ低下している場合です。このような場合、聴力が極端に低下している側の耳に強い音を入れても、歪んで聞こえたり、かえって聞き取りを妨げたりする可能性があります。そのため、比較的聴力が残っている方の耳に合わせて補聴器を調整し、片耳装用とする方が効果的な場合があります。

耳の病気や形状により片耳しか装用できない場合

中耳炎が治らず治療を行っている、過去に受けた耳の手術の影響が残っている、あるいは生まれつき外耳道の形状が極端に狭い、または塞がっているなど、医学的・物理的な理由で補聴器の装用が困難な耳もあります。このような状況では、装用が難しい方の耳への補聴器使用は避け、問題なく装用できる方の耳にのみ補聴器を使用するという選択になります。

予算的な制約がある場合

補聴器は機能や性能によって価格帯が幅広く、決して安価な医療機器ではありません。両耳に装用する場合、当然ながら費用は2倍近くになります。そのため、予算的にまずは片耳から補聴器の使用を開始するという選択肢も考えられます。ただし、可能であれば将来的に両耳装用へ移行することも視野に入れながら検討することが望ましいでしょう。

 

3章目:補聴器の片耳装用のメリット・デメリット

 

 

ここでは、片耳装用における主なメリットとデメリットを客観的に整理し、それぞれ解説します。

片耳装用のメリット

まずは、片耳装用を選択することの利点について見ていきましょう。

  • 費用負担が少ない
  • 閉塞感や自声の響きが少ないことがある

以下で、それぞれのメリットについて説明します。

費用負担が少ない

補聴器本体の購入費用はもちろん、電池代や修理・メンテナンスにかかる費用も基本的に片耳分で済みます。そのため、両耳に装用する場合と比較して、初期費用および継続的にかかるランニングコストを抑えることが可能です。

閉塞感や自声の響きが少ないことがある

特に、補聴器を装用しない側の耳の聴力が比較的良好な場合、その耳が開放されている状態になります。これにより、補聴器や耳せんによって耳を塞いだ際に感じる閉塞感や、ご自身の声がこもって響く感じが軽減されることがあります。

 

片耳装用のデメリット

次に、片耳装用に伴う可能性のあるデメリットや注意点について解説します。

  • 音の方向感覚をつかみにくい
  • 騒音の中での聞き取りが難しい
  • 聞き取りに努力が必要で疲れやすい
  • 使用しない耳の機能低下のリスクがある

以下で、それぞれのデメリットについて説明します。

音の方向感覚を掴みにくい

私たちは、左右の耳に届く音のほんのわずかな音の大きさと時間差を感知し分析することで音源の方向を特定しています。片耳からの情報だけではこの両耳聴効果が十分に働かないため、どこから音がしているのか判断が難しくなります。特に後ろから近づいてくる車の音やクラクションなどの音の方向を特定することで危険を回避することにも繋がります。

騒音の中での聞き取りが難しい

「カクテルパーティー効果」と呼ばれる、パーティのように賑やかな場所でも自分の名前を呼ばれた声や注意を向けている人の声は聞き取ることができる現象も両耳に装用することで効果が高まります。騒がしい環境では、聴力が正常の方でも言葉の聞き取りは難しくなりますが、片耳装用では雑音の中から会話内容を正確に聞き取るのがより困難になる傾向があります。

聞き取りに努力が必要で疲れやすい

片方の耳から入ってくる情報だけを頼りに、周囲の音環境を把握し、会話を理解しようとすることは、脳にとって負担となる可能性があります。無意識のうちに聞き取りに集中力を使うため、特に長時間の会話や騒音下では、精神的な疲労を感じやすくなることがあります。

使用しない耳の機能低下のリスクがある

補聴器を使用していない側の難聴の耳は、十分な音の刺激を受けない状態が続くことになります。長期間この状態が続くと、脳がその耳からの情報を処理する能力、特に言葉を聞き取る力が衰えてしまう可能性が高まると考えられています。

 

4章目:補聴器の両耳装用のメリット・デメリット

 

 

 

補聴器の両耳装用には、片耳だけでは得られない様々なメリットがあります。ここでは、両耳装用の主なメリットとそれに伴うデメリットについて詳しく解説します。

両耳装用のメリット

まず、補聴器を両耳に装用することによって得られる主なメリットを見ていきましょう。

  • 音の方向感覚がわかりやすい
  • 騒音の中でも会話を聞き取りやすい
  • 音が自然で立体的に聞こえる
  • 聞き取りの負担が少なく疲れにくい
  • 両耳の聴力維持につながる

以下で、それぞれのメリットについて説明します。

音の方向感覚がわかりやすい

左右の耳に入る音のわずかな違いを脳が捉えることで、音の出所を正確に把握できます。これにより、どこから話しかけられたか、どの方向から車が近づいているかなどが分かりやすくなり、日常生活での安全性向上にも貢献します。

騒音の中でも会話を聞き取りやすい

パーティのような賑やかな環境でも、自分の名前を呼ばれた声や注意を向けている人の声は聞きやすい「カクテルパーティ効果」を活用することができます。騒がしい場所でも会話がしやすくなり、コミュニケーションがスムーズになることが期待できます。

音が自然で立体的に聞こえる

左右の耳からバランスよく音が入ることで、音に奥行きや広がりが感じられ、より自然で臨場感のある聞こえ方になります。音楽鑑賞など、音の質を楽しみたい場面での満足度も向上しやすいです。

聞き取りの負担が少なく疲れにくい

左右の耳で音を聞き取る役割を分担するため、片耳だけに頼るよりも疲れにくくなります。長時間の会話や会議などでも精神的な疲労を感じにくく、楽にコミュニケーションを続けやすくなります。

両耳の聴力維持につながる

左右両方の耳の神経に適度な音刺激を与え続けることは、それぞれの耳が持つ言葉を聞き取る能力の維持につながるといわれています。

両耳装用のデメリット

次に、両耳装用を選択する際に考慮すべきデメリットについても見ていきましょう。

  • 自分の声の響きや閉塞感を感じやすい
  • 日常の管理の手間が増える

以下で、それぞれのデメリットについて説明します。

自分の声の響きや閉塞感を感じやすい

両方の耳を補聴器やオーダーメイドの耳せん(イヤモールド)で塞ぐことになるため、装用を始めたばかりの頃は、耳が詰まったような感覚(閉塞感)や、自分の声が頭の中でこもって響くように感じることがあります。ただ、多くの場合、慣れや調整で改善していきます。

日常の管理の手間が増える

毎日の着脱、電池の交換や充電、清掃、湿気対策のための乾燥といった手入れを2台分行う必要があります。片耳装用と比較すると、これらの管理にかかる時間や手間は増えます。

 

5章目:片耳装用におすすめの補聴器4選

片方の耳の聴力がほぼ正常で、もう片方の耳が聞こえない、あるいは聴力が非常に低い「一側性難聴」の場合には、「クロス補聴器システム(CROS)」という特殊なタイプの補聴器が効果を発揮することがあります。これは、聞こえない側の耳に装着した送信機が音を拾い、その音を聞こえる側の耳に装着した補聴器へ転送する仕組みです。

以下に、各システムの特徴を簡単にまとめます。

フォナック (Phonak) クロスI―R

  • メーカー: フォナック (Phonak)
  • 価格相場(セット): 40万円台~
  • 特徴: 2025年1月に発売が開始された、最新作インフィニオシリーズに対応するクロス送信機です。インフィニオスフィアは、ERAとDEEPSONICの二つのチップを搭載し、賑やかな場所で「ことば」と「雑音」を分離し音声から雑音を除去することで、よりクリアな音声を実現していることが特徴です。また、オートセンス6.0により複雑な場面でも楽しんでいただけます。従来のクロスよりも充電の持ちと防水性能がアップ。スマートフォンにつないで音量変更が可能です。

リサウンド ビビアクロス

  • メーカー: リサウンド
  • 価格相場(セット): 36万円台~
  • 特徴: インテリジェンスオーグメンテッド(IA)を搭載し、騒音下でも鮮やかな聞き取りで聞こえをサポートします。聞きたい音にフォーカスそやすくなり、聞き取りのストレスを軽減します。クロス送信機でありながら、スマートフォンにペアリングし音量の調整ができます。

オーティコン(Oticon)CROS/CROS PX

  • メーカー: オーティコン(Oticon)
  • 価格相場(セット): 30万円台~
  • 特徴:オーティコンのブレインヒヤリングで周囲が賑やかな環境でも脳が音の意を理解しやすいインテント・リアル・ジルコン等のシリーズに対応しています。このブレインヒヤリングは、補聴器側のみに搭載されていますが、処理した音をクロスに転送しているため、よりストレスが少なく聞こえをサポートしています。

シグニア (Signia) CROS Pure change&Go IXシリーズ

  • メーカー: シグニア (Signia)
  • 価格相場(セット): 30万円台~
  • 特徴:シグニア独自のPureC&GIXシリーズの補聴器と連携します。聞こえない側の音をワイヤレス伝送し、より自然な聞こえと会話の理解をサポートします。充電式モデルが充実しています。

 

聞こえの感じ方は人それぞれ異なります。補聴器の装用耳を検討するにあたってカウンセリングと、補聴器の細かな調整や測定が重要になります。

ヒヤリングストアではお客様おひとりお一人の聞こえの状態やご希望に合わせた最適な器種選択ができるように最新の設備を取り揃えております。

聴力状態を確認しながらの無料カウンセリングも行っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

店舗情報

 

 

 

 

 

 

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