2025.11.18
デジタル補聴器とは?アナログ補聴器との違いや価格などを解説

近年、補聴器の技術は大きく進歩し、現在販売されている補聴器のほとんどが「デジタル補聴器」です。デジタル補聴器とは、マイクで拾った音をデジタル信号に変換し、内蔵されたコンピューターで処理する医療機器を指します。この仕組みにより、使用者一人ひとりの聞こえの状態に合わせて、音質を非常に細かく調整できるのが最大の特徴です。本記事では、従来のアナログ補聴器との違い、デジタル補聴器が持つ具体的な機能、そして価格帯について、言語聴覚士の視点から客観的に解説します。
1章目:デジタル補聴器とは
デジタル補聴器は、マイクから入ってきた音を「0」と「1」のデジタル信号に変換し、内部に搭載された超小型のコンピューター(ICチップ)で音を処理する補聴器です。音を電気信号のまま大きくするアナログ補聴器とは異なり、音をデータとして扱うため、非常に精密な分析と加工ができます。この仕組みにより、使用者一人ひとりの聴力に合わせて、音の大きさや高低などを周波数ごとに細かく調整することが可能になります。現在市場に流通する補聴器の9割以上がデジタル補聴器といわれています。
デジタル補聴器の特徴
デジタル補聴器の最大の特徴は、個々の聞こえに合わせた精密な調整能力と、快適な聞こえをサポートする多彩な機能にあります。
- ユーザーに合わせた音質調整で音が聞こえやすい補聴器になる
使用者の聴力測定結果に基づき、どの周波数の音をどれだけ増幅するかを細かく設定できます。例えば「高い音が聞こえにくい」方には高音域を、「特定の周波数だけが聞き取りづらい」方にはその部分だけを的確に補うといった、オーダーメイドに近い調整が可能です。
- 高性能な機能を有する補聴器
現在主流のデジタル補聴器には、以下のような機能が標準的に搭載されています。
- 雑音抑制機能
エアコンの音や街中の騒音といった、会話の妨げになる環境騒音を自動的に識別し、抑制します。
- ハウリング抑制機能
補聴器から「ピーピー」と音が漏れる不快なハウリングを瞬時に防ぎます。
- 指向性マイク機能
前方の会話に焦点を合わせ、周囲の不要な音を抑えることで、騒がしい場所でも言葉の聞き取りやすさを向上させます。
これらの特徴により、アナログ補聴器と比較して、より自然でクリアな聞こえを実現しやすくなっています。
2章目:デジタル補聴器とアナログ補聴器の違い

デジタル補聴器とアナログ補聴器の最も大きな違いは、音を処理する方法にあります。その違いが、調整の精密さや搭載できる機能、そして価格に影響を与えます。

特徴
デジタル補聴器は、内蔵コンピューターによる高度な処理能力が特徴です。これにより、騒音下での会話を聞き取りやすくする雑音抑制や、不快なピーピー音を防ぐハウリング抑制など、多様な機能を搭載できます。一方、アナログ補聴器は音を増幅するシンプルな構造のため、機能は限定的ですが、仕組みが分かりやすいという特徴がありました。
音質
音質面では、デジタル補聴器が圧倒的に優位です。一人ひとりの聞こえ方に合わせて、必要な音域だけを増幅し、不要な音は抑えるといった精密な調整ができます。そのため、より自然でクリアな音質を実現します。アナログ補聴器は、入ってきた音をそのまま大きくするため、言葉も騒音も一緒に増幅され、うるさく感じることがありました。
価格
価格は、高性能で多機能なデジタル補聴器の方が高価です。内部のICチップ性能や機能の数によって価格帯が広くなります。アナログ補聴器は構造が単純なため安価でしたが、現在ではほとんど生産されておらず、新品を入手することは困難です。補聴器を選ぶ際は、これらの違いを理解した上で、ご自身の聞こえや生活環境に合ったものを選ぶことが重要です。
3章目:デジタル補聴器のメリット
デジタル補聴器は、アナログ補聴器にはない数多くのメリットを提供し、使用者の生活の質を向上させます。その高度な音響処理技術により、より快適で自然な聞こえを実現します。
1.ユーザー毎に聞こえやすい様に補聴器の調整が可能
デジタル補聴器は、聴力測定の結果に基づき、聞こえにくい音域(周波数)だけをピンポイントで増幅できます。これにより、むやみに全体の音を大きくすることなく、言葉の明瞭度に関わる部分を的確に補うことが可能です。使用者にとって過剰な音の負担を減らし、オーダーメイドに近い自然で快適な聞こえを実現できる点が最大のメリットです。
2.ハウリング(ピーピー音)を抑制する機能
ハウリングとは、補聴器のイヤホンから漏れた音を再びマイクが拾うことで発生する不快な共鳴音です。デジタル補聴器は、このハウリング音を瞬時に検知し、逆の位相の音を出して打ち消す「逆位相方式」などの機能で強力に抑制します。これにより、電話の際や帽子をかぶる際にもハウリングを気にすることなく、安心して使用できます。
3.騒がしい環境でも会話が聞き取りやすい
多くのデジタル補聴器は、雑音抑制機能と指向性マイク機能を搭載しています。雑音抑制機能が周囲の環境騒音(エアコンの音や街のざわめきなど)を自動で低減し、指向性マイク機能が前方の会話する相手の声に焦点を合わせます。これらの機能が連携することで、レストランや人混みの中でも、聞きたい会話をクリアに捉えやすくなります。
4.スマートフォンなど外部機器との連携が可能
近年のデジタル補聴器の多くは、Bluetooth®機能を搭載しています。これにより、スマートフォンと直接ワイヤレス接続が可能です。電話の音声を補聴器で直接聞いたり、音楽を楽しんだりできるほか、専用アプリを使って手元で音量やプログラムの変更も行えます。また、テレビの音を直接補聴器に届ける専用の送信機もあり、家族と同じ音量でテレビを楽しめます。
4章目:デジタル補聴器のデメリット
デジタル補聴器は多くのメリットを持つ一方で、購入や使用にあたって考慮すべき点も存在します。これらはデメリットというより、高性能であるがゆえの注意点と捉えることができます。
1.価格が高い
デジタル補聴器は、高度な機能を実現するための高性能なICチップを搭載しており、その開発コストなどが価格に反映されます。そのため、シンプルな構造のアナログ補聴器よりも高価になる傾向があります。価格は搭載機能や性能によって幅広く、購入前には予算を考慮する必要があります。
2.言語聴覚士や認定補聴器技能者による調整が必要
多機能で精密な調整が可能である反面、その性能を最大限に活かすには、言語聴覚士や認定補聴器技能者といった専門家によるフィッティングが欠かせません。購入後の定期的な点検や再調整も重要となり、使用者自身で全ての調整を完結させるのは困難です。
3.電池の消耗が早い
雑音抑制やBluetooth®によるワイヤレス通信など、便利な機能を使えば使うほど、電池の消費量は増加します。そのため、シンプルな機能の補聴器に比べて電池交換の頻度が高くなったり、充電が必要になったりする場合があります。日々のランニングコストとして考慮しておくと良いでしょう。
5章目:デジタル補聴器の価格相場
デジタル補聴器の価格は、搭載されている機能と性能に応じて大きく異なります。一般的に、片耳あたりの価格相場は10万円程度のものから、50万円を超える高性能なものまで幅広く存在します。
価格は主に、騒音下での聞き取りを助ける雑音抑制機能や、特定の方向の音に焦点を合わせる指向性機能の性能によって決まります。高価格帯のモデルほど、様々な環境に自動で適応する高度な機能が搭載される傾向にあります。また、保証の手厚さも価格によって変化します。一般的には修理保証が1~2年付帯しますが、高価格帯のモデルになると3~4年と保証期間が延び、紛失に対する保証も1~2年ついてくることが多くなります。ご自身の聞こえの状態だけでなく、生活スタイルや補聴器を使いたい場面、付帯する保証等を専門家と相談し、最適な価格帯の製品を選ぶことが重要です。
6章目:デジタル補聴器の選び方
1.聴力レベルに合った性能を選ぶ
・ご自身の聴力に合った音量や調整幅を持つ補聴器を選びましょう。
・難聴の程度によって適した補聴器の種類(耳かけ型、耳あな型)が異なります
2.利用する環境に合わせて機能を選ぶ
・騒がしい場所で使うことが多い場合は、雑音抑制機能や指向性マイク機能が搭載されていると便利です。
・Bluetooth機能が搭載されていればスマートフォンと接続をすることができ、通話やストリーミングを補聴器で直接聞くことができます。
3.形状・デザインを考慮する
・目立ちにくいデザイン、耳への圧迫感が少ない形状など、長時間使用する上での快適さやフィット感を重視しましょう。
・充電式タイプは電池交換の手間が省けて便利です。
4.信頼できる補聴器店を選ぶ
・専門的な知識と技術を持つ「認定補聴器技能者」の在籍している専門店を選びましょう。
・購入前には試聴期間等を利用し、実際の生活で聞こえ方や装用感、音量などを確認しましょう。
5.調整の重要性を理解する
・補聴器は購入して終わりではなく、専門家による丁寧な調整と、その後のメンテナンスが不可欠です。
・聞こえの悩みが解消され、生活の質が向上するまで、納得できるまで調整を重ねることが大切です。
7章目:おすすめのデジタル補聴器4選
ここでは、現在市場で評価の高い代表的なデジタル補聴器を、異なる特徴を持つ4つの製品から紹介します。各メーカーが独自の最新技術を搭載しており、それぞれに得意な領域があります。ただし、最適な補聴器は一人ひとりの聴力やライフスタイルによって異なるため、あくまで専門家と相談する上での参考としてご覧ください。

オーデオ インフィニオ スフィア

- メーカー名: フォナック
- 価格相場(片耳)545,000円~
特徴
「言葉」と「雑音」を分離する専用AIチップ(ディープソニックチップ)を搭載した世界初の補聴器であり、騒がしい環境での会話が劇的に聞き取りやすくなる点が最大の特徴です。また、防水設計や多様なデバイスとの接続性も高く、アクティブなライフスタイルを送る方におすすめできる一台です。
インテント ミニライト

- メーカー名: オーティコン
- 価格相場(片耳): 270,000円~
特徴
「じぶんセンサー」(4Dセンサー)を世界で初めて搭載した補聴器で、ユーザーの体の動きや音響環境、会話活動などを感知し、「何を聞きたいか」「何を行いたいか」というユーザーの意図をくみ取って、必要な音を脳に届ける革新的な製品です。これにより、聞き取りのストレスや労力を軽減し、コミュニケーションをより楽に楽しむことができるよう設計されています。
スタイレットIX

- メーカー名: シグニア
- 価格相場(片耳):209,000円~
特徴
世界初の「ロックオン機能」を搭載し、騒がしい環境での会話をより聞き取りやすくする革新的な技術です。この機能は、言葉の細かい部分を正確に再現する「ワードロックオン」と、複数の話し相手を動いても追いかける「スピーチロックオン」の2つの技術で構成され、より明瞭な聞こえを実現します。
Edge AI

- メーカー名: スターキー
- 価格相場(片耳):344,800円~
特徴
AI(人工知能)を補聴器本体で処理する「エッジAI技術」を搭載し、クラウドに依存せずリアルタイムで音環境を分析し、より自然でクリアな聞こえをサポートする補聴器シリーズです。これにより、騒がしい場所でも音声の認識率が向上します。
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🕒公演日:2025年12月21日(日)15:00開演
📍会場:東京文化会館 大ホール
📅応募締切:2025年11月30日(日)まで
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当日は各メーカーの担当者と認定補聴器技能者が常駐し、聞こえや補聴器に関するご相談に丁寧にお答えします。
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■ 開催概要
- 日時:2025年11月24日(月・祝)
11:00~16:00(最終受付 15:30) - 会場:東武百貨店 船橋店 4階1番地 スペース∞F
- 参加費:無料(入退場自由/事前申込不要)
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